2017/10/02 11:34


ビーバップみのる様 つい先日「きょこんのかくせい」を購入させていただいたものです。 着いたその日のうちに全編観ました。感想を書かせていただきます。

突然ですが、世の中には二種類の人間しかいないと思います。人の話を聞く人間と、聞かない人間です。僕は前者です。

人の話を細部までよく聞いています。何年も前の、何気ない会話の断片を引き出してきて、「よくそんなこと覚えてるね」と驚かれることもあります。だけどどこかで、話を聞けない奴らに憧れている自分もいます。無駄な知識をひけらかす。文脈を無視して全く別の話を始める。何度注意しても直さない。そこに全く負い目を感じずにいられることがすごいと思う。「きょこんのかくせい」にはそんな奴らがたくさん出てきます。

きょこんさん。納豆のひと。カレー屋の親父。みんな全く人の話を聞かない。価値観を共有しようとしない。でも、人の話を聞かないからこそ、失わずに済んでいるものもあると思うのです。

あのカレー屋が40年以上もってきたのは、あの親父が人の話を聞いてこなかったからだと思います。「きょこんのかくせい」を鑑賞する上で、ここはすごく大事なポイントだと思います。人の話を聞きすぎると、いろいろなものを吸い出されて失っていくと思います。僕がまさにそうでした。だから僕は、人の話を聞く代わりに、自分自身のこともあまり喋りません。防衛本能です。自分のことを喋って後悔するくらいなら、つまらない話でも聞き手に徹するほうがよっぽど楽です。もりたさん(同い年)は圧倒的に人の話を聞く人に見えました。彼も「聞きすぎる」きらいがあるのだと思います。聞かれたら全部しゃべっちゃいます。そしていろいろなものを失ってきたのだと思います。でも、そういう実直な人物であるからこそ、周囲の人々が彼を助けてくれたのでしょう。みのるさん、鶴岡さん、鳥羽さん、梅沢さん、河童熟女さん、ラウンドガールさん。みんな、もりさたんがちゃんと人の話を聞けるとわかってるからこそ、千葉に集ってあそこまでやってくれたのだと信じています。ただ、繰り返しになりますが、

僕はきょこんさんみたいな話を聞かない人に希望を感じてしまうのです。

きょこんさんはあまりにも人の話を聞かなさすぎて、最終的には自らの世界に閉じこもってしまいますが、それはそれでいいと思います。そういう宇宙観がこの地上に存在し得ていること自体に価値があると思います。そしてビーバップみのるさんも同様に、圧倒的に話を聞かない人だと思います。だからこそ「きょこんのかくせい」が撮れたのだと思います。この地球の隅っこの、誰も目を向けようとしなかった暗部に光を当てようとした「きょこんのかくせい」は、真面目に人の話を聞くような人間には撮れないと思います。

この映像に1万円を支払う価値があったのか?なかったのか?

ということばかり考えながら観ていましたが、途中からそんなことはどうでもよくなりました。同じ映像を多用しすぎとか、フォントが統一されてないとか、そもそも長すぎるとか、いろいろ言いたいことはあります。だけどそんなことは超越して、僕に新たな価値観を提示してくれたドキュメンタリーだったと思います。途中、ロッキーの話がでてきますが、映画解説者の荻昌弘さんがかつてこのようなことを言っていたのを思い出しました。「これは単なるスポーツ映画じゃありません。ボクシングが好きとか嫌いとかもうそんなことには関係なく、人生するかしないかというその分かれ道で、するという方を選んだ、勇気ある人々の物語です」https://www.youtube.com/watch?v=Vx5YovmVxUA&feature=share